衣食住に困らない普通の生活。
おじさんもおばさんもこんな俺を我が子のように可愛がってくれるし、何の不満もない。
ずっと、こんな暮らしがしたかった。
家に帰った時、『おかえり』と温かく迎え入れてくれる家族が欲しかった。
食卓を囲んで今日あったことを話して。
そんな生活に憧れていた。
それなのにどうして心にポッカリと穴が開いてしまっているんだろう。
俺は……バカだ。
手を離してから自分の気持ちに気付くなんて。
俺は、姫が好きだった。
自分でも信じられないくらいに、姫を愛していた。
何よりも一番大切で、絶対に失いたくなかった……。