「……――紫苑!!……なんで……なんで……――」


扉を叩く手を止めて、呆然とその場に立ち尽くす。


するとその時、部屋の扉が勢いよく開いた。



「どちら様?」


迷惑そうな表情を浮かべた中年の男性が扉の隙間から顔を出す。


「あ……あの、ここに住んでた人は?」


「あぁ。一週間前に引っ越したよ。アンタ、ここに住んでた男の子の友達かい?」


「……はい……」


「ああ、そういえば。ちょっと待ってて」


すると、おじさんは何かを思い出したかのように一度部屋に引っ込むと、再び顔を出した。