「んっ……」


激しいキスの合間に恐る恐る目を開く。


え……?


その時、あたしは驚いて目を見開いた。


紫苑が涙を流していたから。


声も出さずにただ静かに涙を流していた。


そして、あたしから顔を離すと、柔らかい笑みを浮かべた。



「姫、またね。指輪……いらなかったら、捨ててよ」


紫苑はそう言うと、あたしに背中を向けて歩き出した。





そして、その日を境に



紫苑はあたしの前から姿を消した。