「そんなところに立ってないで座れば?」


「……うん」


そううながされて、そっと彼の隣に座るあたし。


すると、彼は座り込んだまま身動き一つとれないでいるあたしの頬にそっと手を伸ばした。


「っ……」


頬に触れた彼の大きな手のひら。


彼の熱が頬に伝わって全身が一気に熱くなる。



「ね、姫。またここで会ってくれる?」


口元をわずかに緩ませる彼。


ああ、やっぱりこの人はカッコイイ。



「じゃあ、また」


あたしが答えるのを待つことなく、彼はスッと立ち上がった。


彼が動いた時、風にのって届いた甘い香り。


太陽の光が彼の茶色い髪に反射してキラキラと光る。


そしてそのまま、彼はあたしの心をかき乱すだけかき乱して、何事もなかったかのように屋上から出ていった。