数時間前、あたしは屋上で紫苑に押し倒された。
激しいキスの後、紫苑があたしの首筋に顔を埋めた。
その直後に訪れたわずかな痛み。
顔を離すと紫苑は口の端をクイッと上に持ち上げた。
「俺のものだっていう証」
「証って……?」
「だから、姫は俺のものなんだって」
あたしの気持ちを知ってか知らずか。
紫苑はあたしの心に土足で踏み込んでくる。
そして、最後にこう付け加えた。
「俺、姫が好きだよ」
その言葉を残して、紫苑は嵐のように屋上を去っていった。
紫苑が言った『好き』という言葉。
その言葉にどんな意味が含まれているのか、あたしには分からなかった。



