「別に大したことじゃないの。何となく家出したくなっただけ」 「なんとなく……?」 「そう。だから、心配することなんて何にもないから。これからもちょくちょくあると思うけど、全然気にしなくていいからね」 あたしがそう告げると、お父さんの顔色がみるみるうちに強張った。 「また家出をする気なのかい?」 「うん。すると思う」 この家にいる限り、ずっと。 あたしの居場所は、紫苑の家だから。