「姫、聞いてる?」 姫の髪にそっと指を伸ばすと触れる寸前で、 「触んないで」 と姫は身動き一つせずにそう言った。 鼻声でわずかに震えている。 「泣いてんの?」 「……泣いてない!」 「ならこっち見てよ」 「……やだっ」 駄々をこねる子供のような姫。 そんな姫が愛おしくて。 「こっち見てくんないなら、力ずくで向かせるよ?」 俺がそう聞くと、姫は何も言わずにまた黙りこんだ。