「……なぁ、あの子お前のこと呼んでるっぽいよ?」 海斗のその言葉に顔を上げると、教室の扉から顔を出す派手な女子生徒に気が付いた。 何度か見たことがあるけれど、誰かは分からない。 「あの子って誰だっけ?」 「お前、知らないわけ?あの子の友達じゃん」 「あの子って、姫?」 「それ以外誰がいるんだよ」 「それ、さっきも言われた」 俺は席から立ち上がると、扉の傍でクイクイッとこちらに向かって手招きしている姫の友達に近付いていった。