「あっ、あたしも手伝うよ」 「……やめろ!!俺がやる」 「……――っ」 紫苑が上げた大きな声。 その声に驚いて思わずビクッと体が震えた。 「ごめん、姫はそこにいて。姫にまでこんな思いさせたくないから」 「だけど……」 「あれ、出ていった俺の母親。ビックリしたでしょ?」 「……うん。ちょっとね」 紫苑はせっせと地面に落ちている万札を拾っていく。 通行人は、みんな不思議そうな顔をしながらあたし達の横を通り過ぎていった。