「ううん、何でもない」 首を振ると、紫苑は大きな手の平をあたしの頭に乗せた。 そしてそのまま優しく撫でる。 「姫に触れられるのは俺だけでしょ?」 首をほんの少しだけ傾けて口の端をクイッと持ち上げる紫苑。 あたし達のテーブルの近くにいる女性客はみんな紫苑に釘付けで。 もちろん、紫苑の目の前にいるあたしも。 「そうだよ。紫苑だけだよ」 平常心を保とうとしても声が震える。