「ねぇ、聞いてんの?」
自然と肩に回された長い腕。
紫苑とは違う香水の匂い。
煙草の匂いと混じりあって、気分が悪くなる。
紫苑に触れられると、その部分がジンジンと熱くなるのに。
息が止まりそうなくらい、心臓が激しく暴れ出すのに。
それなのに、この人に触れられても何にも感じない。
むしろ不快感すら覚える。
このまま、流されちゃおうかな……って、そう思えない。
紫苑と初めてキスをした時、確かにそう思ったのに。
紫苑とならそれでいいって。
流されてしまおうって……。
それなのに、どうしてこの人に流されることができないんだろう。
ああ、そっか。
あの時のあたしはもう、自分でも止められないくらいハマっていたから。
自分ではどうすることもできないくらい、
紫苑を好きになっていたんだ。



