「……まだ起きてる?」 「起きてるよ」 「紫苑。あたしね……――」 時計の針は深夜2時をさしている。 真っ暗な部屋の中で姫は小さな声で話し始めた。 シングルベッドに向かい合うように潜り込んでいる俺達。 少しでも体を動かせば、どこかしらが触れる。 姫の髪、いい匂いがする。 うちのシャンプーの匂いとは違う。 そんなものまで家から持ってきたのか。 そんなことを考えながら、俺は「うん」と小さく相槌(あいづち)を打った。