嘘と苺とショートケーキ 【短編】




『(…ていうか、いつまでこの体勢…!)』




はた、と今さら気付いた。




そうだった、あたし押し倒されたままだ…!


意識した途端に、どきんと心臓が跳ねた。


…もうナオたちに鉢合わせすることもないし、引き留めなくても出て行かないし…。


ちらっと呉暁を見ると、相変わらず2人の方を気にしていた。



……今なら抜けれそう!



『っ…しょ!』




―ガバッ!



腹筋に力を込めて、一気に起き上がった。


突然のことに驚いたのか、いとも簡単に呉暁の拘束は外れた。



「くらっ…!」


『さっきから、なに見てるの?』



給水タンクの陰から、ずいっと身を乗り出した。


こうでもしないと、下にいる2人の姿が全く見えない。




『…………っ!!!!』




言葉に詰まった。



心臓が止まるかと思った。


頭がフリーズするところだった。



「倉眞さんっ…!」



また、腕を引かれた。


そんなに強い力じゃなかったのに、それを振り払うする余裕はなかった。


だって、あの2人、今―――




キス、してた。




「っ…」


『…………………ほんとに、付き合ってるんだ…』



そう、呟いた瞬間。


きつく瞑った瞳から、涙が溢れた。



『…ふ、っ…ぅあっ…く、っ…』





屋上の扉が開く音が、意識の外で聞こえた。