嘘と苺とショートケーキ 【短編】



なんでここにいるの…?


一応、授業中のはずじゃ…。


ていうか今、ふっ…冬薙って…!



「はー…」



呉暁は気まずそうに額を押さえていた。


…今降りたらダメって、そういうことだったの?



『(………なに、それ)』



あたしのために言ってたの?


ナオと冬薙さんにばったり会わないように?



「…倉眞さん、怒ってる?」



そろそろと上目遣いで、呉暁があたしを見た。


…髪の毛が茶色いからなのか、しょんぼりと尻尾を垂らした犬みたいに見える。



『……怒ってないよ』



怒ってない。



念を押すようにもう一度、小さく反芻した。


…そう言い聞かせたかったのは、呉暁じゃなくて自分自身になのか。



『(にしても授業中に屋上来るなんて……なにしにきたんだろ?)』



呉暁はどこかハラハラとした表情で、しきりにナオたちがいる方に目をやっている。



…なんだろ?



ここにいると、微かにしか声が聞こえない。





さっきからボソボソとなにか言ってるのはわかるけど、内容は一切わからなかった。