嘘と苺とショートケーキ 【短編】



目を見開いて、がっちりと掴まれた右腕を凝視した。


お、起きてたの!?



「おっはよー。オレのこと、わかるよね?」



にへらと笑っているこの男のことは、知っていた。


ああ…どこかで聞いたことある声だと思った…。



『……どうも、お隣さん』



呉暁 海斗(くれあき かいと)―――同じクラスかつ、隣の席。



茶色く染まった、今時風の襟足が長い髪の毛。


両耳に何個も付いたピアス。


いつもチェシャ猫みたいな色をした派手なパーカーを羽織ってる。


…え、どんな色かって?


自分で調べてよ、それくらい!



「でも、喋ったことはあんまないっしょ?」



ズイッと顔を近付けて、呉暁がへらりと笑った。


か、顔が近いっ…!


こんな見た目だから近寄り難いけど、呉暁はまぁまぁカッコいい。



簡単に言うと、ナオ≦呉暁≦彰哉くんって感じ。



…そんな顔が真正面にあったら、否が応にも恥ずかしい。



『う…腕っ!離してよ!』


「えー、やだ」


『…はあっ!?』



ほんとになんなのこの人!?


あたしじゃなくて藍依が相手だったら、絶対にぶん殴られてるよ!


…あ、その前に彰哉くんが殴るか。




「倉眞さんさぁ…」




―ドサッ!