涙なんて見せられるわけがなかった。
だって、あたしは。
今までの4年間、なにもしてこなかったのに。
失恋したなんて、想いが報われなかったなんて、泣き喚く権利ないじゃない。
ナオは勇気を出して、冬薙さんに告白したけど。
あたしは親友って関係を壊せなくて、ナオから告白されるのをただただ待ってただけで。
自分からはなにも、行動なんて呼べるモノはしてなくて。
『…ぐずっ、ふぇえっ…』
自分の教室には向かわないで、そのままあたしの震える足は屋上を目指した。
誰にも会いたくなかった。
この泣き顔を、涙の理由を、誰にも知って欲しくなかった。
―ギィッ…
赤黒く錆び付いた音が、耳に障った。
顔を顰める暇もなく、あたしは一目散にフェンスに駆け寄った。
『うぇ、ふぅ、あ、あ…ああっ…!!』
フェンスを両手で掴んで、そのままコンクリートの床にずるずると崩れ落ちた。
…走ってきた所為で、足がガクガクしてる。
明日は筋肉痛かな、なんて。
そんなどうでも良いことを考えてないと、壊れちゃいそうで。
現実を見るのが、怖くて。
『うあっ、ああっ…あ、……ナ、オ……ナオッ…好きだ、った、よぉ…!!』
親友に、彼女ができました。

