「それでも、私はアンタを倒す」


「ふぅ、ちょっと疲れたな。
久しぶりに動くと身体がダルイ」


「余裕のつもり。
それとも油断を誘っているの」




アイドは笑みを浮かべた。




「君が俺に勝つことはない。ただ休みたい。疲れた」




アイドは椅子を造り座った。


足を組み、あくびをしていた。




「アンタはホントに多才能力者なの」


「そうだよ」




先程まで闘志があった男が一瞬でやる気のない男に変わった。


アカネは構えたまま、動かない。


アイドはあくびするのを止め、アカネを見た。




「君は報告で多才能力者との戦闘経験があると聞いている。
ガキどもが何度もやられているからどれほどの奴かと思えば、ただの女か」


「…」


「おいおい、そんな目をするなよ。
これでも褒めているつもりだぞ」


「どこが…。
多才能力者にも種類がありそうね。
こんなに梃摺るのは初めてだわ」


「いいことを教えてやる。
薬:ペーテントが『G』で開発されてね。
技術力のない奴らがこの薬を造るのに十年かかった。
この国なら数日で作れるようなものだ。
その薬の効果がどんなものか、わかるか」


「…超越者になる」


「正解。
だけど、半分ほどかな」


「もう半分は何」


「正確には超越者に近い存在になれるんだ。
俺達、多才能力者がね」


「それじゃあ…」




アイドは椅子から立ち上がった。


アカネは動かない。


いいや、動けないのかもしれない。


戦闘の最中に怪我をしたのかと思えた。


アカネの前にアイドが立った。




「安心しろ。その薬は未完成でね。
俺とNO.2にしか適合しないんだ」


「…」




アイドは黒い刀を持ちあげた。




「それじゃあね」