「そうだな。
病院は生きる方と亡くなる方が一緒に暮らす空間だ。
君は怖いのか、死んだ後のことが」


「そうだよ。俺は何人も殺害している。
これ以上、やると本当にあの世での生活が危うくなりそうだからね」


「ふん、今さら遅い。君の過ちは死後永久に報われないだろう」




アイドの顔色が変わった。


少し怒っているようだった。




「アンタ、名前は」


「森下ケンイチだ。ここの院長をしている」




アイドはポケットからメモ帳を取り出した。
何かを書いていた。




「何をしているんだ」


「俺は死者を大切にしているんだ。アンタのことは忘れない」


「どういう意味だ」




アイドはメモ帳を閉じて、ポケットに閉まった。


同時に周囲の空間の乱れが先程よりも強くなった。




「アンタをこの世からあの世に送らせてもらう」


「ふん、君は病院内では争いをしないんだろ」


「ここは病院の庭だろ。病院内じゃない」


「庭も病院の一部だが」




アイドは左手に黒い刀を造った。


右手はポケットに閉まったままだった。




「総員、『キャンセラー』解除を許可する。
奴を止めろ」