「白崎さん」






私は突然クラスの男の子に話しかけられた。







目を向けると、クラスメイトの伊藤君だった。







「何…」







「俺の名前は伊藤だ。
宜しく。
ちょっと白崎さんと話したい人がいるんだけど…
いいかな」






「いいよ」












私は考えて答えなかった。





この返答から私の人生の路線は変わったのかもしれない。











伊藤君の後ろにもう一人の男がいた。







その男が伊藤君の前に現れた。












「紹介する。
こいつは同じクラスメイトの神山ミコトだ」












「…こんにちは」











私は驚いた。彼から接近してくるとは思ってもいなかった。










「…こんにちは」










「僕と…友達になってくれませんか」









私はすぐには返答しなかった。













「なあ、白崎さん。
ミコトと友達になってくれ」











「わかった。
私は白崎ナナミ。
ナナミって呼んで…」















私は名字で呼ばれたくなかった。







父親の存在をなかったことにしたくなかった。








たとえ、名前で記憶が戻っても、そこだけはこだわりがあった。












「うん、僕もミコトでいい。友達からは…ミコトって呼ばれているから」














「これから宜しくね。ミコト君」











「うん…」












これが私とミコト君との出会いだった。