施設に戻ると、私は夫に話した。


一週間に起きたことを詳しく説明した。


夫は話し終わるまで聞いてくれた。




「―――だから、私は………」


「ナナミはどうしたいの。
選抜部隊が嫌なら、僕が話をして一般の部隊にしてもらうけど…」




夫は心配していた。


夫の質問で、辛かった経験談を話していたことに気付いた。




「私は………」


「僕は先に現実世界に行ってほしい。
これ以上、ナナミが苦しむ姿を見たくないから……」




夫は私の左手を握った。




「本当はもっと早く気付くべきだったと思う。
僕はナナミを止めるべきだったんだ。
ナナミは周りからの期待を背負ってしまった。
やりたいことを優先させ、後先を考えずに賛成した。
その代償がこの状況を生んだんだ。
僕が止めれば、家族そろって行けたのに……」


「それは違う」




私は左手に乗った手を強く握った。




「私もこうなることは分かっていた。
でも、そうしたかったの。
ミコト君が『ヘブン』を守っている姿を見て、何もできないのが辛かったの」


「でも…」


「大丈夫。たった一年。
自分が選んだ道だもの。
代償ぐらい、受け止める」




夫は私を抱きしめた。


顔が見えないが声を出さずに泣いていた。


私は気付いていないようにした。


結婚をしてから泣く姿を見たことがなかった。


家族を支える。


それだけではなく、弱い姿を見せようとしない夫が初めて見せた姿だった。


私は小さく背中を撫でた。