ヨシトさんの言いたいことがわからなかった。


規則を再度確認して何になるのか。




「ボス、我々はこの訓練を別のとらえ方で考えるべきではないだと思います」




ヨシトさんは冷静に分析し始めた。


アカネは横になったままだ。


聞いているのか、聞いていないのかは確認できない。


ただ、静かな空間の中でヨシトさんの声が聞こえた。




「自分達はこの三日間で知識を付けました。
そして、今は経験を積んでいる。
しかし、現時点ではそれが活かされていない。
それは私達の班内での現状です。
もし、他の班中で現状を打破できる人物がいるならば………」




私は横になりながらアカネの方を見た。


アカネは横になったままだ。




「見つけ出し、技術を奪うべきです」




ヨシトさんが話し終わり、しばらくするとアカネが起きあがった。




「ボス」




ヨシトさんは意見を聞こうとしていた。




「以前、山本の自慢話を聞かされたことがあるのよ。
『RPG』ではなく『シミュレーション』ゲームだったとか………
今回もそれに近いものなのかもしれない」


「なら………」


「私も最初はただの実技だと考えた。
本来行われる実技施設は三日間のプログラムで学んだことを有効に使えば簡単な生活が出来る場よ。
でも、ここは違う」


「ボスも気付いていたんですね」


「ええ、
まるで意図的に知識が役立たない場所で行われているように感じられる」


「それならば、なぜこの場所を選んだのでしょうか」


「『適性』、あるいは『強心』を観察するものかもしれない。
どちらにしても、私達は『規則』を強く意識しすぎて他の班の『情報』を知ろうとしなかった」


「『情報』がこの現状を打破する唯一の手段ととらえるべきですね」


「そう、その方向で進めるのならば、私達が取るべき道は一つしかない」


「『学んだ知識を活かす』のではなく『情報を持つ者から知識を奪う』ですね」




アカネは頷いた。


話がまとまると二人とも横になり、眠りに付いた。