「止めなさい」




女性の声が周囲に響いた。


喧嘩をする者、愚痴をこぼす者が一斉に止めた。


調査に向かったアカネ達が戻ってきた。


アカネの顔を見た。


怒った表情をしていた。


アカネは倒れている車いすを元に戻し、私を座らせた。


服に付いた砂を叩き、綺麗にした。


元の状態に戻してくれたあと、話し始めた。




「何があったの」




アカネの質問に対して誰も答えようとしない。


皆が地面を向いている。


今考えると、成人を過ぎた大人達が子供のように喧嘩をしたなど恥ずかしいとさえ思えた。




「もう一度聞くわ。何が合ったの」




アカネの声が暗くなった。


誰も答えないことに苛立ちを感じたのかもしれない。




「アカネ、皆悪くないの。
まだ環境に慣れていないだけ」




私は誰も答えないので話した。




「言い訳はいい。状況を報告して」




鋭い眼差しで私を見つめた。


こんな目でアカネに見られたのは初めてだった。




「私達が捕まえた動物を逃がしてしまったの。
でも、悪気があってしたことじゃない。
それだけは分かってほしい」




私は精一杯で『生物学』の男を守ろうとした。




「逃がした………誰が」




犯人探しが始まった。


でも、私は答えなかった。


答えたところで意味がない。


話せば状況が悪化する。


『この人だ』と言えば、この場は済むことだ。


でも、グループの輪が元に戻ることはないだろう。


一度崩れた関係を崩壊させることは簡単だ。


でも、元に戻すのは厳しいだろう。