「あら、白崎さん」






「先生に話したい人がいます。
山本君…」









山本はまだ下を向いていた。







「山本君。久しぶりね」







「お久しぶりです。綾瀬先生」





「どうしたの。下を向いて」












山本君は顔をあげた。






でも照れくさいのか視線を先生と合わせない。





「俺は…ずっと先生に謝りたいことがあって…。
先生、もう十年も前になりますが…突然学校を辞めてすみませんでした」











山本君は頭を下げた。









「いいのよ。頭をあげて」










先生の声と共に山本君は頭をあげた。













「もう十年前のことじゃない。
それにあの頃は世間で色々と問題が起きて、山本君が転校してから少しして学校が閉鎖した時期があったの。
だから、部活にも影響はなかったわ。
それにあなたがいたから後輩達もあなたの姿を見てインターハイを目指すようになったわ」













「でも…俺は恩師である先生に…何も言わずに旅に出てしまった。
俺はこの十年間先生に謝らないといけないと考えていました」