「私は部下と一緒に現実世界へ行くわ。
現実世界に行く人達の管理者として任に付く」


「アカネ、部下はどうするの」




アカネを信頼しているから『W』の部下達は今まで、指示通りに行動していた。


もし、総長のアカネが仮想世界からいなくなれば、まとまりがなくなる恐れがあった。




「部下達はお父さんに任せる」




アカネの目つきが変わった。何度も考えた結果だろう。




「それは無責任よ」私はきっぱりと言った。


「でも、私が行かなければ現実世界は無法地帯になりかねない。
指揮する人が必要よ」




アカネの言うことは理解できた。


なぜなら、シミュレーション結果から出ていた。


けれども、私は話さなかった。


アカネ自身が決めなければならないことだったからだ。


私は頷いた。


たぶん、私とアカネがこうして会うことはないと思えた。


アカネは最後の別れを言いに来たのだと感じた。


でも、アカネは続けて話し始めた。




「私は現実世界に行く。
ナナミも一緒に行かない」




私は動揺した。


予想していなかった。




「今まで『C』として、世界のために働いてくれた。
その結果、能力病を悪化させてしまった。
私には責任がある」




アカネは下を向いた。




「いいの。
私だけを特別扱いすると他の人に悪影響を及ぼす恐れがある」


「だから、ナナミにも現実世界での特別な仕事の任に付いてもらう」




アカネは鞄から資料を取り出した。


私は受け取った。


資料を読むと、システムの説明書だった。




「これは…」




アカネは顔を見た。