アカネのお父さんの演説から九カ月が過ぎた。


あと数日で十カ月になる。


私はアカネと会う約束をしていた。


仕事を午前中に終わらせ、午後の予定を空けた。


電話で大事な話があると言われたからだ。


私はアカネが来るまで本を読んでいた。





トントン…




ドアがノックされた。


私が返事をするとアカネが入ってきた。


いつも通り、法被を着ていた。


手には鞄を持っていた。


アカネは挨拶をして椅子をベッド付近に置き、座った。




「アカネ、久しぶり」




読んでいる本を棚に置きながら話した。




「久しぶり。体調はどう」




アカネは心配そうな顔をしていた。


部屋には車いすがあり、病気の進行が進んでいるのは誰が見ても分かる。


アカネは私の病気に責任を感じていた。会う度に謝罪した。


その度に私は礼を言った。こうなることは私自身で予測していた。


私が選んだ道なのだから、アカネが悪いわけではない。


むしろ、感謝をしていた。


ここまで私のわがままで仕事をさせてくれたことに…




「大丈夫。下半身が動かないぐらい。
不便はないわ。
そんなことよりも、アカネこそ大丈夫。
疲れが溜まっているんじゃないの」




私はアカネの顔を見た。


報告では聞いていたが、日を重ねるごとに、仕事も増えて行っている。




市民の暴動阻止
市民との話し合い
部下達の管理
多国との話し合い
訓練施設の建設





私が知っているものでも、これだけの仕事を担当しているのだ。


全て部下の管理をする仕事で報告を聞く仕事でも量が多すぎた。


本当なら私と会う時間がもったいないとさえ思えた。