私は答えられなかった。


答えは伊藤君が示すためだった。




「伊藤君が求めるものはどっち」




伊藤君は黙った。


私はシミュレーション結果から二つの道の問題点を見つけた。


前者はこの世界のシステムトラブル。


この世界は人間の思考とソフトで出来ていた。


そのため現実世界から仮想世界へ、または仮想世界から現実世界へ繰り返し戻ると思考回路に影響が起きてしまい、仮想世界が崩壊する可能性がある。


また、現実世界から帰還した人の情報から現実世界に違和感を持つことも予測された。


後者は現実世界で暮らしていける人には限りがある。


資料からわかるように『才能』をこの世界で長年使用しない人しか行けない。


分散して送る際にも問題が生じる。


予定された人が途中から離脱、または予定されていない人が入会する恐れがある。


問題点は一部であり、ほかにも色々な問題点が存在する。


この共通点は『人間の心』であった。


どちらを選んでも、問題は生じる。二つの道は闇黒の道だ。