僕の時


 どんなに頑張って鳴こうと主人には聞こえないだろうと思った。

「ふにゃっ!」

勢いをつけて外人に飛び掛かったが軽くかわされた。

烏猫はさらに意を決し、再び跳ぶと主人の持っている紙をくわえた。

「おだ…」

主人は苦しそうに肩で呼吸をしていた。

本当に嫌な予感がしてきた。

烏猫は紙切れたった一枚のために何をしているんだと思った反面、主人を守ったというとてつもない達成感も感じていた。

−−−後から思えばそれは間違いではなかった。

「帰しなさい。」

外人が紫の目をギラギラ光らせて言う。

くわえている紙を掴まれてしまった。

「むみっ、むみっ…!」

烏猫は必死に抵抗を試みるが、外人は紙をなかなか離さない。