烏猫の主人はもう周りなど見ていなかった。

顔色が悪く気分が優れないのが見て取れた。

早く休ませてやろうと烏猫は思った。

しかし外人はそうはさせない。

「ではせめてここにお名前の記入をお願いします。」

…烏猫はなんとも言えない陰湿な響きに気が付いた。

主人はなんの疑いも持っていない。

外人の目が紫色にかわっていた。

−−−いけない!

烏猫は直感的にそう感じ、走り出した。

何かはわからない。

けれど何か危険の事が起こる気がしていた。

主人が名前を書きはじめた。

目が虚ろになっている。