しかし幸せな日が長く続くはずもなく、2度目、3度目と発作は続きそのたびに烏猫は代償を払ったのだった。



そんな日々のある日、とうとう烏猫の主人は4度目の発作を起こした。

烏猫はすでに鼻と口を片前脚を代償として払っていた。

おじいさんの一番の願いはわからない。
しかし少しでも長くこの世に留めてあげるためだ。
今日も代償を払って魔法を使おうと思った。

なのに−−−…。

「おだ。私の目がおかしいのかい?君の鼻と口がないように見える。」

烏猫は何故か胸が痛んだ。

「やはりそうだ。私のせいだね?」

主人はどこか悲しそうに微笑んだ。

烏猫にはその表情の意味がわからなかった。

「おだ、お前は優しいからな。
また私を助けてくれるんだろう。

でもな、それでお前が苦しむなら私が死んだほうがずっといぃ…」

−−−なんで?
なんでそんな事言うの…?

考えても考えても答えなんてでないままだった。

次第に発作は激しくなり、烏猫はどうしたらいぃかわからなくなった。

ただ、魔法だけは使えなかった。

「生きたい。」ただそう言ってくれればよかったのに…

風の音も聞こえない静さ過ぎる沈黙の後、

「おだ。鼻と口、取り戻せるといぃな…。おだ…」

と言って最後まで烏猫の事を思いながら、主人は静かに目を閉じた。