「なぁに?」

「だって急に母親みたいになるから」

「“みたい”ってねぇ、カイちゃん? 私はあなたの母親なのよ。もうずっと20年も」


そうだよね。

いつまでも頼りなげなあなたなら、あの人に委ねることなんてできないから。また泣いているんじゃないかって心配にならないように、オレが安心して任せられるように強くいてもらわないと。


「あのねカイちゃん」

「なに?」

「退院する時なんだけど、彼が迎えに来てもいいかなって…」


遠慮がちに訊いてきたその態度に申し訳なさが募る。


「誰だよ“彼”って?」

「え」

「……いままで通り、お父さんでいいよ」