あれは、

高校入試を控えたある日のことだった。

有り得なかったはずの ”ひとめ惚れ”ってやつを初体験してしまった、わたし。


それは、生まれて初めて虹を見たときの感動に似ていたかもしれない。


ううん、

それは、初めてピスタチオジェラートを頬張ったときの衝撃に...


いや、それも違う。


それは言葉で説明するのは難しい。

でも、あの胸の真ん中を射抜かれたような衝撃と、キューーっと苦しくなってバックンバックンと騒ぐ心臓に、こんなことって現実にあるんだ、って驚いたんだ。


あのとき、待合室の長椅子に腰をかけた彼は、まるでスポットライトを当てられているみたいに見えた。

大げさなんかじゃなくて、本当にそこだけ特別な空間のように、柔らかな光に包まれてキラキラしていた。