[side Mito]




掴まれた手首が熱くて。

ミトって呼び捨てにされたことも、車を運転する横顔も、ハンドルを握った腕にうっすらと浮かぶ血管も……ドキドキしすぎて呼吸が苦しいくらい。


「オレ、空腹を通りこしてマジで瀕死状態なんだよね。だからミトちゃん、ランチ付き合って?」


そう言って車にキーを差しこんだカイ君。


「でも、さっきヤマトと遊びすぎたせいで汗かいてるし。こんなんで、どこも行けねーし。
かと言って、いまからホテルって……やっぱそれはさすがに……」


ぶつぶつと独り言を繰り返してる。

そして「よしっ 決めた」と短く言ってニコッと笑ってこっちを見た。その笑顔にまたクラクラしそうになる、わたし。


「んじゃ、しゅっぱーつ!」


小さな子供みたいなかけ声を上げて、カイ君は車を走らせた。