[side Kai]



いつもの病院、いつもの医者、おきまりの診察。

そしてこのあとで、いつもの薬ってやつを受け取って帰る。
変化のない単調な、おきまりの流れを終えて部屋を出る……はずだったんだけど。


「君は、あの望月先生の息子さんなんだってね?」


医者が言った一言。
上から順にシャツのボタンをとめていた指を、オレはそこで停止させた。


「いやー、知らなかったな。
この前ね、昔の同僚と飲む機会があって望月先生と君の話が出たんだ。名前を聞いて、もしかしたらって思ったんだけど。うちのスタッフにも知ってる人間がいて、そうだって言うから」


そこで言葉を切ってオレを見た医者の笑い顔。

なにをコメント求めるように見てんだよ?

悪意はないのかもしれないが、かいつまんだ話し方が、それに満ちているようにもとれた。