[side Mito]




カイ君がキスをしていた。


知らない誰かと。わたしみたいな子供なんかじゃない、大人な女の人だった。

わたしの頬に触れた唇で、その人の唇に……

キスを、していた ――。


思いだしたくない光景なのに、夢にまで出てきたシーン。
考えるたびに、ぐるんぐるんってまわるの。

やっぱり好きになるのは間違いだったんだ、って。

わたしなんかが恋をする相手じゃなかった。わたしなんかを相手にしてくれる人じゃなかったんだ、って。

繰り返し繰り返し、飽きもせずに思う。

人を好きになるのって、こんなに苦しいことなのかな。