そして

「バツゲームって言ったじゃん」

そこで見せたのは、ちょっとイジワルな顔。


次の瞬間。
カイ君の影がフワッと降りてきて、わたしの頬に何かが触れた。


「………」


起こったことを確認する前に、離れていった彼の顔。
開けっぱなしだったドアに手をかけ、その中へ収まる姿。


「じゃ、またね。バイバイ」

「……さ、さようなら」


走り去る車を呆然と見送るしかできなかった。

カイ君が残していった香りと、濡れ髪の感触。

そして、頬に触れたやわらかな ――

瞬きも忘れ、いままで以上に鼓動の高鳴りを感じていたの。