それからしばらくして、私は帰路についた。 桜の木が見えないところまで行く前に、振り返った。 凛桜はまだそこにいて、私を心配そうな顔で見ている。 「………心配性」 小さく呟いて手を振ったら、凛桜も微笑んで振り返した。 心臓が、とくんって小さな音をたてる。 まだ帰りたくないって言ってる。 あの家に帰りたくないって……泣いてる。 「………何やってんの…私」 早く帰らなきゃ。 あの人が、寝ているうちに。 私は前を向いて、歩き出した。