そんな日々を経てぽつりぽつりと身の上話をして帰る。自分は母の連れ子で義父は粗暴で馴染めず居心地が悪い。あまつの果てには義父は自分に興味を持ち風呂を覗いてくる始末で、身の危険さえ感じているという。
あっけらかんと笑顔でいるが、抱えきれぬその重圧に、潰される日はそう遠くはないだろう。
「そりゃ半端ない事態だ。こー、親戚のウチとかに預かってもらうとか?」
「だめー。二人とも親類には縁切りされてる。チンピラ男に好色女、犬も喰わない…です」
「じゃあ、実の親父さんしかないな」
「仕事の虫の父は、お金目当ての母にさえ見限られて他の男と駆け落ち。製薬会社の社員だったとかなんとか…です」

県名と業種、苗字だけで父親さがし。オークションで買ったその土地のタウンページを上からなぞった。ブランド財布の時給はとうに払い終えたあと、ようやくあたりをつけることが出来た。
「もう時給はいいんだから、勉強でも風呂でも?」
「世間では当たり前の[サービス残業]ですから。あー、おじさん悪徳企業だね?あははは」