「結城!」


やるせない気持ちで、ぼんやりそんなことを考えていたら、突然呼ばれた名前。


すると次の瞬間、勢いよく飛んできたボールが顔面を直撃した。



……そうでした、試合中でした今。



地面にごろんと転がった私のもとに、みんなが駆け寄ってきてくれる。


「悪い結城!大丈夫か!?」


ボールを投げた男子が、私を抱き起こしながら申し訳なさそうな顔をした。


「あはは、平気平気!ぼさっとしてた私が悪いの、気にしないで!」


そう言った後に、鼻の下に何やら温かいものが流れるのを感じた。


「おいィィイイ!結城お前鼻血でてるぞ!しかも両穴から!」

「およ?」


自分では見えないけど、かなり悲惨な顔になっているらしく、若干みんなが引いているように見えた。



「バカ」



すると、だばだばと鼻血を垂れ流している私の鼻に、聡未がハンカチを当ててくれた。



「さと、み……」

「さっさと保健室いっといで。顔腫れてるわよ」

「はんかち……ち……が」

「いいわよ血なんてついても。それどうせダイソーの2枚で100円のハンカチだから」


「いいからはよ行け」 聡未に促され、私はひとまず体育館を出た。



「……やっぱり、ちょっといたい……かも」



ズキズキするほっぺたをさすりなから、私は保健室に続く廊下を足早に歩いた。