ならばお好きにするがいい。

 
「……結城」


優しく体を揺らされて目が覚めた。


ぼんやりする視界を占領する人影。


視界が鮮明になるにつれて、その人影が小田切先生だと分かった。


「着いたぞ」

「……先生なんで私のお家知ってるの」

「俺がストーカーみたいな言い方するんじゃねーよ。担任なら生徒のある程度の情報くらい持ってるに決まってんだろ」


先生は小さく溜め息をつくと、私のおでこに手を当てた。


「寝たら少しは落ち着いたみてーだな」

「私寝てた?」

「ぐっすりな。起こしても起きねーから、30分くらい寝かせた」

「そか……ご迷惑おかけしました」

「全くな」


先生が私の肩にかかったスーツに手を伸ばしたから、私は慌ててスーツを引っ張った。


「コラ何してんだテメェ。俺のスーツだ、返せ」

「やだ。これ返したら帰らなきゃいけないんでしょ?だからやーだ。私もっと先生と一緒にいたいんだもん」

「アホか。さっさと帰ってメシ食って薬飲んでネギ巻いてコンニャク乗っけて寝てろバカ」

「ヒドイよ先生!先生と生徒の恋を描いたかの有名な某携帯小説では、先生は主人公の女の子とドライブしながら車の中で夜ご飯食べてプリンを半分こしていました!」

「よそはよそ、うちはうちだ。そんなに優しい先生が羨ましいなら他の小説の子になれボケ」

「私も先生とプリンを半分こしたいであります!」

「あいにく俺は甘いもんが好きじゃねえ。プリンが食いてえなら家で一人で好きなだけプッチンしてろ」

「プッチンプリンだけがプリンだと思ったら大間違いです!私はもっぱらとろーりクリーム゙ッ……!」


先生の手が物凄い勢いで伸びてきて、私の口を塞いだ。