それからしばらく他愛のない話をした後、俺はふと気になって、枕元の時計に目をやった。
電波時計のディスプレイに表示されていた数字は、20時49分。
思わず狼狽えた。
未成年を、しかも女子を、その上自分の生徒である子を、部屋に連れ込んで良い時間じゃない。いや、俺が意図的に連れ込んだわけじゃないにせよだ。まずいものはまずい。
まさかと思い尋ねれば、案の定、家には連絡していないなんて言うもんだから、俺はますます頭を抱えた。
親御さんだって心配してるだろうし、何より、俺の良心が許さない。
つーか、日のあるうちならまだしも、仮にもこんな時間に生徒を部屋に上げたことが公になったら……。そう考えたら、ますます危機感に襲われて。
自分のことも、もちろんあいつのことも考慮して、早く帰るように促したのに、あいつは珍しく、素直に言うことを聞かなかった。
しばらく押し問答が続いて、ついに限界に達した俺が怒鳴り声を上げると、あいつはようやく口を紡いだ。
泣きそうな顔で、目に涙をいっぱいに溜めて、じっと見つめてくるもんだから、俺はすぐに罪悪感にかられて。
「家族に心配はかけちゃいけねぇ。いいな?」
そう優しく諭したら、それが合図だったかのように、あいつは突然泣き出した。

