ならばお好きにするがいい。

 
満腹で苦しそうに横になった俺を見て、そこでようやくしょぼんと眉を下げた結城。


「先生、大丈夫?」なんて、小さく首をかしげながら、俺の腹をすりすりと擦る姿は、なんだか小動物みたいで。


叱ればうるうると泣きそうな目でうなだれるし、褒めてやれば目をキラキラさせて喜ぶし。本当に仔犬みたいだと思った。本当に、ずっと見ていても飽きない奴。


「私、いいお嫁さんになれるかな?」


不意に、結城がそんなことを尋ねてきた。


その時、考えてしまった。


もし、こいつが俺の嫁になったら……って。


多分……いや、絶対、間違いなく、確実にものっ凄い疲れる。


でも……きっと、今の何倍も楽しく過ごせるんだろうな。


仕事から帰ると、こいつが玄関でしっぽ振って待っていて。「ごはん出来てるよ!早く食べて食べてー!」って、またバカみたいに大量の飯作ってて、「こんなに食えるか!」ってまた叱って、でもきっと、やっぱりそれはめちゃくちゃ美味くて。褒めてやれば、ぴょんぴょん跳ねて喜んで。
気兼ね無く二人きりになれたら、きっとこいつ、アホみたいに甘えてくるんだろうな。じゃれてくるこいつと遊んでやるのも、悪くないのかもしれない。


そこまで考えて、はっと我に返った。


すぐに自己嫌悪。


何を考えているんだ、俺は。


ありえない、結婚なんて。


こいつは生徒で、俺はその教師。そういう目で、見てはいけない。


そう自分に言い聞かせれば、胸の奥につっかえる異物感。