だが、その後すぐに俺は後悔することになる。
褒めると調子に乗る……いや、乗りすぎることくらい、重々承知しているはずだったのに。
「先生、ちょっと待っててね!」 そう言って嬉しそうに立ち上がって部屋を出ていった結城が、戻ってきた時に抱えてきたのは、目を疑うほどの料理の山。
筑前煮、しょうが焼き、サバの味噌煮に八宝菜……。明らかに病人が食すメニューではない料理たちを意気揚々と並べていく結城に、誰が食うのかと問いかければ、「先生以外誰がいるんですか?」と、あたかも当然といった口調でそう切り返される。
曰く、「病気の時こそ栄養つけなくちゃ!」ということらしい。それについては一理ある。一理あるけれども。
こんなめちゃくちゃな量、食えるわけねえだろ!……と、思ったが、食えた。
冗談抜きで、どの料理も驚くほど美味くて、あの時は、腹がいっぱいなのも忘れちまうくらい食うことに夢中になってしまっていた。
後悔したのは、山のような料理を全て平らげた後。久々に限界を超えるまで食ったもんだから、このまま腹張り裂けて死んじまうんじゃねえかと思った。
でも、その苦しさは決して不快な苦しさではなくて。むしろ、心地良い、幸せな苦しさだった。

