ならばお好きにするがいい。

 
「お待たせしました。ハンバーグセットふたつね」


ジュウジュウと脂の弾ける音と、香ばしい匂いに顔を上げると、目の前にハンバーグの乗った大きいプレートが運ばれてきた。


「熱いから気を付けてね。いちごパフェは食後にお持ちします」

「ありがとうございます!いただきまーすっ!」


にっこり笑ったおばさんに大きなお礼をして、私は一目散にハンバーグにフォークを突き刺した。


夢中になってハンバーグを頬張っていたら、テーブルを挟んだ向こう側から、くっくっと小さな笑い声が聞こえた。


「お前って、なんでもうまそうに食うよな」


そう指摘されて、思わず赤面してしまう。


「ご、ごめんなさい……」

「なんで謝るんだよ、褒めてんだぜ?お前のそういうとこ、嫌いじゃねぇよ」


先生はハンバーグにナイフを入れながらふ、と笑って、小さく切られたハンバーグの欠片を口に運んだ。


私の一口より、先生の一口の方が小さくて、なんだかちょっぴり恥ずかしくなる。


「先生、美味しいね」

「ん」


先生はチラ、とカウンターの方に視線を向けて、店員さんがこっちを見ていないことを確認すると、小さく口を開いた。


「……お前の作ったやつの方がうまい」


ぶっきらぼうに、素っ気なく呟かれたその言葉が、どんなに嬉しかったか。先生は分かってくれてるのかな……。


「じゃあ私、将来ハンバーグ屋さんになろっかな!」

「それはだめだ」

「え!?」


「どうして!?」 そう尋ねようとしたところに、食後のいちごパフェが運ばれてきて。私の意識は全て真っ赤ないちごと生クリームへと流れてしまった。