植物園から少し西に向かうと、小さな裏山がある。
その山のふもとに、ひっそりと店を構えている小さいレストランがあった。
私たちはそこで晩ごはんを食べることにした。
「ハンバーグセットふたつと、それからいちごパフェもひとつください」
お冷やを運びに来てくれた優しそうな店員のおばさんに、先生はそう注文した。
「いちごパフェ……?誰が食べるの?」
「俺が食うと思うか?」
「……!先生大好き!」
おもわず大声になった私に、先生は困ったように笑うと、人差し指を立ててシーッと唇に当てた。
「あんまり大声で“先生”って言うなよ」
ハッとして、慌ててこくこくと頷く。
そうだ、先生と生徒ってバレちゃまずいんだ……。
「じゃあ、まっくんって呼んでも……」
「いいわけねぇだろ」
「じゃあなんて呼べばいーの?」
「……」
そう尋ねると、先生は難しい顔をして黙り込んだ。
あーでもないこーでもないとぶつぶつ呟きながら悩んでいる先生が可愛い。
先生のこと、“雅人”って呼べるようになる日はいつになったらくるのかな。

