それから、「ガキ臭ぇ」ってわざとらしく嫌がる先生を引っ張って、ヒマワリ畑でかくれんぼをした。走り回って火照った体を冷ますために、木陰でお昼寝をした。肩を並べて、夏の香りの草花の道を歩いた。
先生の隣で笑えることが嬉しかった。
隣で先生が笑ってくれることが、すごくすごく嬉しかった。
そして、先生に夢中になっていたせいか、いつの間にかとっぷり日が沈んでいたことに、私は気付かなかった。
薄暗く霞んだ空を見上げて、先生は苦く笑った。
「遊びに夢中で時間を忘れるって……小学生か、俺たちは」
漆黒の鋭い瞳が、柔らかく揺れた。
私を見据えるその眼差しは穏やかで、痛いくらいに優しくて。
ほっぺが熱を帯びていくのが、自分でも分かる。
「……腹減ったな。そろそろ晩メシ食いにいくか」
「何がいい?」 ジーンズのポケットから車のキーを取り出すと、長い指でそれをくるくると回す。
そんな些細な何気無い行動にさえドキドキしてしまう私は、もう重症なのかもしれない。
「ハンバーグ!」
大きな背中にそう叫べば、「本当にお前小学生?」って笑われる。
それさえも嬉しい。

