「それって……」
「どういう意味ですか?」 そう尋ねようとしたら、訊き終わる前に先生は口を開いた。
照れ臭そうに、ちょっと意地悪な笑みを浮かべて。
「んー……お前みたいな能天気な馬鹿を見てると、俺の悩みなんてくだらなく思えちまうんだよなー……。こっちまで馬鹿になるっつーか……」
「ちょ、なにそれっ!」
私が慌てて先生の肩をポカポカ叩くと、先生は「本当のことだろ」って笑ってくれた。
「そういや……」
後ろに手をついて、先生は高い青空を仰ぐ。
「お前と知り合ったのも、確かヒマワリの前だったな」
そう言ってふ、と表情を柔らかく崩した先生。
ヒマワリの前。先生が言っているヒマワリというのは、あの日、美術室の前の廊下に飾られていた、私が描いたヒマワリの絵のことだ。
あのヒマワリをきっかけに、私と先生は知り合った。あの出来事がきっかけで、私は先生に恋をした。
先生、あの日のこと覚えててくれてるんだ……嬉しいな……。
「……あのヒマワリ、お前みたいだった」
「私……?」
「あぁ」
「どういうこと?」
「……それは言えねえな」
「なにそれっ!気になる!」
先生の体を揺らすと、先生は「やめろよ」って楽しそうに笑った。

