ヒマワリ畑の手前で振り返ると、先生がハッとしたように私に視線を移した。
「あ、あぁ……すげーな……」
先生は少し呆然としながらも、私の隣に並んで、まじまじとヒマワリを見つめた。
私よりずっと大きくて、先生と同じくらいの背丈がある立派なヒマワリ。茎も葉っぱもがっしりとしていて、ザラザラした棘みたいな産毛がたくさん生えた大きなヒマワリ。
そんなヒマワリに触れながら、先生はぽつりと呟いた。
「こんなヒマワリ見たの、ガキの頃以来だ……」
確かに、最近街で見かけるヒマワリといったら、茎がヒョロヒョロしてて、花が垂れ下がった小さな種類のものばっかりな気がする。
「ここは穴場なの。森の奥にあるから、このヒマワリ畑を知ってる人は少ないんです!」
誇らしげにそう言ってみせると、先生はおかしそうに小さく吹き出した。
それから、先生はヒマワリに鼻をくっつけると、くつりと笑った。
「懐かしい匂いがする」
先生がそう言うから、私も匂いを嗅ぎたくなって。背伸びをしたら、先生が私をヒマワリと同じ目線まで抱き上げてくれた。
ヒマワリは決していい香りとは言えない。
だけど、鼻の奥を引っ掻くような青い匂いは、昔から変わらない。
確かな夏の匂い。
「俺のガキの頃は、こんなヒマワリがあちこち生えてたんだけどな……。んで、ヒマワリが枯れたら種とって食うんだよ」
「えぇええ!?種食べるの!?」
「バカ、ヒマワリの種ってすげーうめぇんだぞ」
「ハムスターのような口ぶりですな」

