「ほらみなさい言わんこっちゃない。どこが元気だっていうのアンタって子はほんとにもーっ」

「なん……で、お母さん口調なんだよ……」


苦しそうに全身で息をしながら私を睨む先生のおでこに、そっと手を乗せた。


「ほら、騒ぐからまた熱上がっちゃったじゃないですか」

「騒がせたのはお前だろーが……」

「樫芝先生に『熱が上がるようなことはしないように』って言われてたのに」

「いや、多分それこういう意味じゃねぇぞ……って、樫芝あの馬鹿……なんつーこと教えてんだ、次会ったらぶん殴ってやる……」


ぶつぶつと何か呟いている先生に乱れてしまった布団をかけなおして、私は立ち上がった。


「?やっと帰る気になったのか?」

「ううん。いいから先生は黙って寝てて」

「何が黙って寝ててかバカヤロー。お前人んちで何をしようとしてんだ」

「ごはん作るの」

「あ?」

「先生が早く元気になるようにごはん作るのっ!」


私がそう言ってにっこり笑うと、先生は再び勢い良く飛び起きた。


「それだけはやめろオオオオオオオオオオオオ!お前に料理なんて出来るわけねーだろ!お前は俺を殺す気か!」


むか。


肩を少し強く押すと、いとも簡単に倒れた大きな体。


「結城……テメ……」


枕に半分顔を埋めたまま、苦しそうに私を見上げる先生は、もう喋る気力も無さそうだった。


「大丈夫です」


私はそれだけ言い残して、寝室を出た。


ドアに手をかけたとき、チラッとベッドの方を見たら、先生は観念したように目を瞑っていたから、私は小さく笑ってキッチンに向かった。