ならばお好きにするがいい。

 
炎天下をダッシュしたせいで汗だくになった顔をハンカチで拭いながら、買ってきた風邪薬を渡すと、樫芝先生は急いでそれを小田切先生に飲ませた。


「……あとはしばらく様子見かな」


死んだように眠る小田切先生を見ながら小さく安堵のため息をつくと、樫芝先生は私に冷たいお茶の入ったグラスを差し出した。


それを一気に飲み干すと、からからだった体が一瞬にして潤って、生き返った心地がした。


「ぷはー……」

「おつかれさまです、莉華さん」

「本当におつかれさまです、誰かさんのせいで」

「あはは、ごめんごめん」


じとーっと睨み付ける私の頭をポンポンと軽く撫でると、樫芝先生は自分の荷物を持って立ち上がった。


「じゃ、俺もう帰るね」

「えっ!?もう帰っちゃうんですか!?」

「うん。だって俺、薬持ってこいとは言われたけど、看病しろとは言われてないもん」


そんなあっさりと……。まぁ、樫芝先生らしいといえぱ樫芝先生らしいけど……。


「それに」

「それに?」

「二人のラブラブの邪魔したくないしね」

「!」


「しばらく雅人のこと看ててあげてよ。熱上がるようなことはしないようにね」 樫芝先生はニヤッと意味深な笑みを浮かべて、真っ赤になって口をぱくぱくさせている私の横を通りすぎて部屋を出ていってしまった。