「雅人!莉華!」


樫芝が慌てて俺のもとに駆け寄ってきた。


「痛ェんだよ馬鹿、本気で投げただろ。後で一発殴らせろよテメェ」

「悪い!莉華ならかわすと思ったんだけど……ていうか莉華どうした!?」


俺の腕の中でぐったりと息を荒げる結城をみて、樫芝と、集まってきたクラスの奴らは表情を硬くした。


「熱中症だろ、多分」


俺は結城を抱えたまま立ち上がった。


「俺はこいつを保健室に連れていく。試合は続行してくれて構わない」


審判に俺がそう言うと、一気に不安の色を浮かべる俺のクラスの生徒たち。


「先生待ってください!先生が抜けちゃったら絶対負け……」

「負けねーよ」


情けない顔をしている生徒の額を軽く弾く。


「お前ら血ヘド吐くほど練習頑張ったんじゃねーのか?なんでそんなに情けねーツラしてんだ。もっと自信持ちやがれ」


負けねーよ、お前らは。なんてったって俺のあのキツい練習に、誰一人欠けることなくついてきたんだからな。


「俺と結城の分まで頑張ってくれねーか」


俺の問いかけに、顔つきを変えて「はい!」と大きく返事をしたこいつらを見たら、思わず笑みがこぼれた。


「任せてよ先生!」

「絶対勝って優勝するから!」

「先生、結城のこと頼んだぜ!」


そうだ。それでいい。


俺はコートを離れると、しっかりと結城を抱え上げて保健室に向かった。


「二度目だな、こうしてお前を保健室に運ぶのは……」


俺の肩に小さな顎を乗せて、すがるように首に腕を回して。ぐったりと俺に体を委ねる結城。


「んっとに世話のかかるガキだよテメェは……」